看護師のための電子カルテナビ

1970年頃: 情報システムの病院への導入が始まる。

1960年代の終わりごろから1970年代にかけて、病院情報の情報システム化が導入されるようになりました。

 

当時の情報システム化は、病院業務の効率化や省力化が主の目的で、
主に医療会計業務での効率化や省力化のために導入されたものです。
複雑で多量の保険点数計算をコンピュータで処理をし、
外来窓口会計や入院費請求、診療報酬請求書(レセプト)作成などの業務が、
このシステムの導入により、随分省力化され、迅速化し、正確に処理できるようになりました。
また、蓄積された薬品名や疾患名などのデータも、
診療データの一部としての利用が積極的に試みられるなどの役割も果たしています。

 

このように、医療会計業務部門での導入がスタートした病院情報システム化ですが、
次に情報システム化が勧められたのは臨床検査部門でした。
臨床検査部門でも、扱うデータが数値データであるため、
コンピュータで扱いやすかったことや、
検査機器自動化が著しく発展し、コンピュータを接続することによって検査業務の大幅な自動化が図れたことなどが、
検査部門でのIT化を推進する理由となりました。
そして、臨床検査部門でのIT化の推進は、
診療データの計数化の推移の大きな機動力としての役割も果たしています。

 

また、病院特有の業務システムではありませんが、
給与計算や財務経理などの一般的な事務業務へのシステム導入も比較的早期から始まっており、
そのシステムを使用する企業も増えていました。

 

しかし、当時の情報システムは、あくまでも部門ごとに独立したシステムであり、
部門内業務の効率の成果を上げることはできましたが、
効用の影響範囲も部門内部に留まったもので、
他部門との連携や共有と言うところまでは進んでおらず、
伝達・コミュニケーションに関しては従来どおり伝票を使用していました。

1980年〜1990年頃: 複数の部門システムを導入する病院が増える

看護部門では、勤務表の作成から始まり、
1980年代中ごろから看護計画がコンピュータ化され、
入院患者さんのコンピュータによる管理、病棟管理日誌の作成、
看護管理業務を支援するシステムなどが導入されるようになりました。

 

情報システムの普及が急速に進み、
大病院では、部門システムの統合化が始まりました。
これにより、患者さんの属性など、全部門で共通して利用される情報の共有が実現しています。

 

また、1980年代は、「オーダコミュニケーションシステム」が実用化されました。
オーダコミュニケーションシステムとは、病棟や外来に端末機を配置し、
医師や看護師などが処方や検査などの指示情報や入退院情報を直接入力し、
必要な部署に電子的に伝達するシステムです。
このシステムは、指示情報が発生した時点で、発生した場所で、発生させた医療従事者が入力するもので、
オーダリングシステム(オーダエントリーシステム)といいます。

 

オーダリングシステムの導入により、
部門内業務だけでなく、
従来では紙の伝票による伝達であった部門間の情報伝達が電子化されるようになりました。
この電子化により、情報伝達の正確化・迅速化が実現し、
患者さんが到着する前に各部門に情報が伝達されることになり、
外来患者さんの医事会計、薬局の待ち時間の短縮が大幅に実現されました。

 

また、入院関連業務でもオーダリングシステムが導入され、
医師の指示情報が看護業務にスムーズに展開されるようになり、
看護ワークシートを作成するシステムが実現しました。

 

その後、このようなシステムをベースとして、
看護独自のオーダ入力<看護オーダ>へと進展し、
看護過程や看護診断のシステム化がさらに志向されるなど、
看護部門においての看護情報視システムは飛躍的に発展するきっかけとなっています。

 

初期のオーダリングシステムは病院によっては大規模で、
必要経費も高額なものであったため、
大学病院や大学院からの導入となっています。
また、情報技術的にも研究的な開発が必要であったこともあり、
中小規模の病院での導入は難しいものがありました。

1990年〜2000年頃

1990年代になると、コンピュータを中心とする情報機器の高機能化、低価格化の傾向は著しくなり、
機能的にも成熟したパッケージソフトウェアが提供されるようになったことなどから
さらにオーダリングシステムは急速に普及しました。

 

オーダリングシステムの導入は、単なる業務の省力化だけでなく
新たなニーズが生じるようになってきました。
例えば、外来診療室や病棟ナースステーションなどに配置された端末機を
診療現場の医療従事者が単なる入力担当者としてではなく、
情報システムに蓄えられている情報を自らの業務に活用したいというようなニーズです。
つまり、今までの医事部門や検査部門での利用だけではなく、
それにプラスして医師や看護師などの医療現場の利用者に対する診療支援や看護支援機能の充実が
オーダリングシステムに求められるようになって来たということです。

 

このようなニーズに応える技術として、
初期の取り組みであった端末機による検査データ照会、グラフ紹介、医薬品情報(DI:drug information)の提供の充実化が進み、
放射線画像の管理と検索利用を目的とした画像情報処理システムPACS(パックス:picture archiving and communication system)の研究開発・実験的運用も開始されました。

 

また、1990年代半ばには、電子カルテシステム(オーダ情報や検査結果情報だけでなく、
実施情報や診察所見などの診療情報をすべて電子化する試み)も登場しています。

 

とりわけ、実施情報の把握をするためには、
入院看護業務の情報システムの進展が不可欠であったのですが、
看護分野では、2000年前後よりNANDA-NIC-NOCなどをベースにした看護診断、看護過程のシステムが進展しています。

 

また、電子化クリニカルパスが、
電子カルテシステムの進展と同時に歩調を合わせて進化するなど、
看護分野だけでなく医師をはじめとした他職種のスタッフを含め、
病院情報システムの中核となるツールとして電子カルテシステムに実装される例が多くあります。

1994年: 厚生省が、「診療録等の電子媒体による保存について」を通知。

いくつかの先駆的な病院の研究開発と試用を経た後、
1994年4月、厚生省が「「診療録等の電子媒体による保存について」を通知しました。
この通知により、基準を満たせば紙の診療録ではなく、
電子媒体によって診療内容等の保管をしても良いことが示されています。

2001年12月: 厚生労働省が、「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」を発表。

本格的な電子カルテシステムの導入が開始され、
2001年12月に厚生労働省の保健医療分野の情報化に向けてのグランドデザインが示され、
IT化による医療の改革、情報化推進の戦略が提言されました。

 

この「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」のなかで、
電子カルテシステム導入などの達成目標が示されるなど、
今まで以上に積極的な医療の情報化の施策が提示されるようになりました。

 

ですが、特に電子カルテシステムはグランドデザインの中心的な提言ではありますが、
まだ発展途上のシステムであり、明確な定義がない状態でもあります。
過大な期待がかけられているのは事実ですし、
今後の医療の質の保証や向上に及ぼす効果も期待されており、
電子カルテシステムは今後の医療を変化させる可能性を秘めているものでもあります。

 

ですが、現在、大病院では電子システム化が進んでいますが、
小規模病院、特に診療所では電子システム化が進んでいるとはいえない現状があります。

先進的病院情報システムの普及率

オーダリングシステムは、全国の100〜300床の中規模病院に導入されています。
そして、処方、検査、予約の順に採用されています。

 

ですが、電子カルテシステムの普及率は消して良いとはいえません。
電子カルテシステムは300床以上の大規模病院については導入意欲が感じられますが、
300床以下の病院では「導入予定が無い」と言うところがほとんどです。

 

また、利用方法も、本来であれば医療機関同士の連携にも活用することが目的とされていますが、
病院内や診療所内に留まっている例が大半で、
他の医療機関同士の連携にはほとんど活用されていません。

 

発展途上のシステムであり、導入には経費が高額にかかること、
これに見合う収益率の向上が見込まれないことなどが、
電子カルテシステムの導入に二の足を踏むことになっていると考えられています。


キャピタルゲイン